王の行進

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Из серии: 魔術師の環 第一巻 #2
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王の行進

(魔術師の環 第二巻)

モーガン・ライス

モーガン・ライス

モーガン・ライスは、いずれも#1ベストセラーとなった、ヤング・アダルトシリーズ「ヴァンパイア・ジャーナル」(1 - 11巻・続刊)、世紀末後を描いたスリラーシリーズ「サバイバル・トリロジー」(1 - 2巻・続刊)、叙事詩的ファンタジーシリーズ「魔術師の環」(1 - 13巻・続刊)の著者です。

モーガンの作品はオーディオブックおよび書籍でお楽しみいただけます。現在、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、日本語、中国語、スウェーデン語、オランダ語、トルコ語、ハンガリー語、チェコ語およびスロバキア語に翻訳され、他の言語版も刊行予定です。

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モーガン・ライス賞賛の声

「魔術師の環には、直ちに人気を博す要素がすべて揃っている。陰謀、敵の裏をかく策略、ミステリー、勇敢な騎士たち、深まっていく人間関係、失恋、偽りと裏切り。すべての年齢層を満足させ、何時間でも読書の楽しみが続く。ファンタジーの読者すべての蔵書としておすすめの一冊。」 - ブックス・アンド・ムービー・レビューズ、ロベルト・マットス

「ライスは設定を単純に描き出す次元を超えた描写で最初から読者をストーリーに引きずりこむ・・・とてもよい出来栄えで、一気に読めてしまう。」 - ブラック・ラグーン・レビューズ(「変身」評)

「若い読者にぴったりのストーリー。モーガン・ライスは興味を引くひねりをうまく利かせている・・・新鮮でユニーク、ヤングアダルト向けのパラノーマル・ストーリーに見られる第一級の要素を持った作品。シリーズは一人の少女を中心に描かれる・・・それもひどくとっぴな!読みやすくて、どんどん先に進む・・・ちょっと風変わりなロマンスを読みたい人におすすめ。PG作品。」 - ザ・ロマンス・レビューズ(「変身」評)

「冒頭から読者の注意を引いて離さない・・・テンポが速く、始めからアクション満載のすごい冒険がこの物語のストーリー。退屈な瞬間など全くない。」 - パラノーマル・ロマンス・ギルド(「変身」評)

「アクション、ロマンス、アドベンチャー、そしてサスペンスがぎっしり詰まっている。このストーリーに触れたら、もう一度恋に落ちる。」 - vampirebooksite.com(「変身」評)

「プロットが素晴らしく、特に夜でも閉じることができなくなるタイプの本。最後までわからない劇的な結末で、次に何が起こるか知りたくてすぐに続編が買いたくなるはず。」 - ザ・ダラス・エグザミナー(「恋愛」評)

「トワイライトやヴァンパイア・ダイアリーズに匹敵し、最後のページまで読んでしまいたいと思わせる本!アドベンチャー、恋愛、そして吸血鬼にはまっているなら、この本はおあつらえ向きだ!」 - vampirebooksite.com(「変身」評)

「モーガン・ライスは、才能あふれるストーリーテラーであることをまたもや証明してみせた・・・ヴァンパイアやファンタジー・ジャンルの若いファンのほか、あらゆる読者に訴えかける作品。最後までわからない、思いがけない結末にショックを受けるだろう。」 - ザ・ロマンス・レビューズ(「恋愛」評)

モーガン・ライスの本

魔術師の環

英雄たちの探求(第一巻)

王の行進(第二巻)

ドラゴンの運命(第三巻)

名誉の叫び(第四巻)

栄光の誓い(第五巻)

勇者の進撃(第六巻)

剣の儀式(第七巻)

武器の授与(第八巻)

呪文の空(第九巻)

盾の海(第十巻)

鋼鉄の支配(第十一巻)

炎の大地(第十二巻)

女王の君臨(第十三巻)

サバイバル・トリロジー

アリーナ1:スレーブランナー(第一巻)

アリーナ2(第二巻)

ヴァンパイア・ジャーナル

変身(第一巻)

恋愛(第二巻)

背信(第三巻)

運命(第四巻)

欲望(第五巻)

婚約(第六巻)

誓約(第七巻)

発見(第八巻)

復活(第九巻)

渇望(第十巻)

宿命(第十一巻)


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1976年米国著作権法で認められている場合を除き、本書のいかなる部分も、著者の事前の許可を得ることなく複製、配布、配信すること、またはデータベースもしくは情報検索システムに保管することは、その形式、方法のいかんを問わず禁じられています。


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本書はフィクションであり、作中の名称、登場人物、社名、団体名、地名、出来事および事件は著者の想像または創作です。実在の人物・故人とは一切関係ありません。


カバー画像の著作権は Bilibin Maksymに属し、Shutterstock.comの許可を得て使用しています。

目次

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

第七章

第八章

第九章

第十章

第十一章

第十二章

第十三章

第十四章

第十五章

第十六章

第十七章

第十八章

第十九章

第二十章

第二十一章

第二十二章

「柄をこちらに向け、

私の目の前にあるこれは短剣か。

掴んでやろう。

掴めぬが、そこにあるのは見えている。」

—ウィリアム・シェイクスピア

マクベス

第一章

マッギル王は、かなり酒を飲みすぎたため、自室に倒れこむようにして戻った。今宵の宴を終え、部屋はぐるぐる回り、頭は脈打っていた。王のそばには名も知らぬ女がまとわり付き、片腕を腰に回してきた。ブラウスが半分はだけたまま、含み笑いを浮かべながら王をベッドへと連れて行った。 付き人は二人の背後で扉を閉め、控えめに立ち去った。

王妃がどこにいるのかもマッギルにはわからなかった。今夜はそれも気にならない。ベッドを共にすることなど、今ではめったになかった。王妃は自分の部屋に戻ることが多かったが、特に夕食が長引く宴会の後はそうだった。夫が羽目を外すのは知っていたが、気にする様子もなかった。いかんせんマッギルは王であり、マッギル家の王たちはいつの世も特権を伴う統治者であった。

だが、ベッドに向かう時のマッギルのめまいはひど過ぎた。突然、彼は女を退けた。もはやそのような気分にはなれなかった。

「一人にしてくれ。」そう命令すると、彼は女を押しやった。

彼女は驚いて傷つき、立ち尽くした。扉が開き、付き人たちが戻ってきて片方ずつ女の腕を取ると外へ連れて行った。女は抵抗したが、後ろで扉が閉まり、声は遠くなった。

マッギルはベッドの脇に腰をかけ、頭痛が治まるようにと頭を両手にうずめた。こんなに早く、酔いがおさまらぬうちに頭痛が始まるのは珍しかった。今夜はいつもと違い、すべてが目まぐるしく変化した。宴は順調だった。上等な肉と強めのワインでくつろいでいたところに、あの少年、ソアが登場し、すべてを台無しにしたのだ。しゃしゃり出て来て、おかしな夢の話をした。そして厚かましくも私の手から杯を叩き落とした。

そこへあの犬が現れて酒をなめ、皆の目の前で死んだ。マッギルはそれ以来震えが止まらない。現実に打ちのめされたのだ。誰かが自分に毒を盛ろうとした。暗殺するために。どうにも理解できなかった。衛兵や毒見役もすり抜けた者がいる。自分は死ぬ一歩手前だった。そのことが未だに彼を震えさせていた。

ソアが牢獄へ連れて行かれたのを思い出し、そう命じたのが正しかったかどうか考えた。あの少年が毒を盛ろうとした張本人か、犯罪に関わっているのでない限り、杯に毒が入っていたことを知りえないのは確かだ。だがその一方で、ソアには深遠な、神秘的過ぎるとも言える力が備わっていることもわかっている。彼は本当のことを言っているのかも知れない。本当に夢に見たのかもしれない。彼は実際に自分の命を救ってくれ、そして自分はその真に忠実な者を牢獄へと追いやってしまったのかも知れない。

座って額のしわをこすりながら起こったことを整理しているうち、そのことに考えが至り、マッギルの頭はうずいた。だが今夜はひどく飲みすぎた。頭に霞がかかったように思考はどうどう巡りで、真相を解明することなどできない。ここは暑すぎる。蒸し暑い夏の夜、長い時間ご馳走と酒を貪って、体がすっかりほてり汗をかいていた。

マッギルは手を伸ばしてマントとシャツを脱ぎ、下着姿になった。眉とあごひげの汗を拭ってから、反り返って大型の重いブーツを片方ずつ脱ぐと、つま先を丸めた。座ってバランスを取り戻そうとしながら荒く息をした。腹に肉が付いてきた今では、なかなか大変だ。脚を蹴り上げて仰向けになり、枕に頭をあずけた。ため息をつきながら、ベッドの四本の柱と天井を見上げ、目が回るのが止まってくれることを願った。

いったい誰が自分を殺したいというのか? マッギルは再び考えた。ソアのことは自分の息子のように可愛がっていたため、彼であるわけがないと心のどこかで感じていた。ではいったい誰なのだろう、動機は何なのか、と考えた。そして最も肝心なのは、再びしかけてくるだろうか、ということだった。自分は安全なのだろうか?アルゴンの予言は正しかったのだろうか?

答えは自分の理解を超えたところにあると思ったのと同時に、マッギルはまぶたが重くなってくるのを感じた。頭がもう少し冴えていたら、答えが出ていたかも知れない。だが、夜が明けてから顧問団を召集し、捜査を始めるまで待たなければならないだろう。頭の中にあったのは、誰が自分を殺したいかではなく、誰が自分に死んで欲しくないと思っているか、という問いだった。宮廷には王位を欲しがる者があふれている。野心家の将軍たちや策を弄する議員、権力を求める貴族や領主、スパイ、昔からのライバル、マクラウド家の、そしてもしかしたらワイルド(荒地)からの暗殺者。恐らくそれよりは近いだろう。

瞼がピクピクと動き、マッギルが眠りに落ちようかという時、彼の注意を引いたものがあった。眼を覚まし、何かの動きを察知して見回すと、付き人がいなくなっていることに気づいた。瞬きをし、混乱した。付き人が自分を一人きりにしたことなどない。事実、最後にこの部屋でたった一人になったのがいつか思い出せないくらいだ。下がってよいと命じた覚えはない。更に変なのは、扉が開いたままになっていることだ。

その時、部屋の向こう側から音がするのが聞こえ、マッギルは振り向いて見た。壁に沿って忍び寄るように、黒いマントを羽織ってフードを目深にかぶった、背の高い痩せた男が影からたいまつの灯りの下に現れた。マッギルは、本当に見えていることなのだろうか、と思いながら何度も瞬きをした。最初は、ゆらゆら揺れるたいまつによる眼の錯覚、ただの影だと確かに思った。

しかしそれはあっという間に近付き、素早くベッドのところまで来た。誰なのか、マッギルは暗がりの中で焦点を合わせて見ようとした。思わず起き上がり、かつて戦士だった王は、刀、あるいは少なくとも短剣を差しているはずの腰に手をやった。だが衣服を脱いだ後だったため、武器は身につけていなかった。丸腰のままベッドに腰掛けた状態だった。

男は動きが速く、夜の蛇のように近づいた。マッギルは、身を起こした時にその顔を見た。部屋は未だにぐるぐると回って見える。酔いのためにはっきりとわからない状態ながらも、一瞬で自分の息子の顔だと確信した。

ガレスが?

マッギルの心が突然パニックに襲われた。こんなに夜遅くに予告もなく現れ、彼はいったいここで何をしているのだろう?

「お前なのか?」声をかけた。

マッギルは彼の目に殺意を見た。それだけわかれば十分だった。ベッドから飛び出た。

だが相手の動きは素早く、跳ぶように行動に移った。マッギルが手を挙げて防御の構えを取ろうとする前に、金属のきらめきがたいまつの灯りの中に見えた。あまりにも速く、刃が宙を破り彼の心臓を突いた。

マッギルが叫んだ。深く、暗い、苦悶の叫びだった。自分のあげた叫び声に驚いた。戦闘のさなかに何度となく聞いたことのある声。致命傷を負った戦士の叫び。

マッギルは冷たい金属が自分のあばらを貫くのを感じた。筋肉を押し破り、血と交わり、ずっと深くまで押し入る。想像を絶する痛み、まるで刃が永遠に突き進んでいくかのようだ。マッギルは大きく喘ぎ、熱い、塩辛い血が口の中に満ちてくるのを、呼吸が困難になっていくのを感じた。力を振り絞ってフードに隠れた顔を見上げ、驚いた。息子ではなかった。別の誰か、知っている顔だ。誰かは思い出せないが、身近な者だ。息子に似た。

名前を思い出そうとしたが、頭が混乱していた。

男はナイフを持ったままマッギルの前に立ちはだかった。マッギルは、男を止めようとしてなんとか挙げた手を相手の肩に置いた。かつての戦士としての力が自分の中に湧き起こるのを感じた。先祖たちの力、自分を王たらしめてきた、決して降参などしない、自分の奥深くにあるもの。全身の力を振り絞って暗殺者を突き、なんとか押し返した。

男はマッギルが思ったよりも痩せて弱く、叫び声をあげながら後ろにつまづいたかと思うと、よろめいて部屋を横切って行った。マッギルはやっとのことで立ち上がって胸に手をやり、ナイフを抜いた。そして部屋を横切るようにそれを投げつけた。ナイフは石の床に音を立てて落ち、そのまま滑って向こう側の壁にぶつかった。

男はフードが下がって肩の回りに広がり、這い回りながら、マッギルに圧倒されて恐怖に目を見開いた。そして振り向くと部屋の中を走って横切り、短剣を拾っただけで急いで逃げて行った。

マッギルは追いかけようとしたが男は素早かった。そして胸を突き刺す痛みが突然湧き起こった。弱ってきていると思った。

一人きりで部屋に立ち尽くし、胸から手に血が滴り落ちるのを見ていた。やがて膝をついた。

身体が冷たくなってきていた。仰向けに横たわり、人を呼ぼうとした。

「衛兵。」弱々しい声だった。

深呼吸をし、苦しみに悶えながら、深みのある声を絞り出した。王の声だ。

「衛兵!」マッギルは叫んだ。

遠くの回廊から、足音がゆっくりと近づいてくるのが聞こえた。遠くの扉が開かれる音を聞き、人が近づいてくるのを感じた。だが目がまた回り始めた。今度は酔いのためではなかった。最後に彼が見たのは、顔に近づいてくる冷たい石の床だった。

第二章

ソアは巨大な木の扉に付いている鉄のノッカーをつかみ、力をこめて引いた。扉はゆっくりと音を立てて開いた。目の前には王の部屋が広がる。一歩足を踏み入れ、敷居をまたぐと、腕の毛がぞくっとするのを感じた。まるで霧のように空気中を満たす、偉大な暗闇がそこにはあった。

 

ソアは室内に入って行った。壁のたいまつが音を立てている。床に横たわる死体のほうへ進んだ。それが王だということ、そして彼が殺されたのだということは既に感じ取っていた。自分が来るのが遅すぎたということも。衛兵たちは皆どこにいたのだろうと考えた。なぜ王を助ける者が誰もいなかったのか。

死体に近づくにつれ、ソアの膝は弱々しくなっていった。石の床に膝まづき、冷たくなった肩をつかみ、王の身体を仰向けに直した。

先の国王、マッギルだった。目を見開いたまま、死んでいる。

ソアが見上げると、付き人がそばに立っているのが目に入った。大きな、宝石をあしらった杯を手にしている。宴でソアが見つけたものだ。純金製でルビーとサファイヤの列に覆われている。ソアを見つめたまま、その付き人は王の胸にゆっくりと杯の中身を注いだ。ワインのしぶきがソアの顔に散った。

ソアは甲高い声を聞いた。振り向くと彼のハヤブサ、エストフェレスが王の肩に止まっていた。ソアの頬のワインをなめて拭った。

音がしたので振り返るとアルゴンが立っていた。厳しい面持ちで見下ろしている。手には輝く王冠が、もう片方の手には彼の杖があった。

アルゴンは歩み寄り、王冠をソアの頭にしっかりと載せた。ソアは王冠がきちんと頭に納まり、金属がこめかみを包むのを、その重さが沈み込むのを感じた。そして不思議そうにアルゴンを見た。

「今、そなたが王となった。」アルゴンが宣言する。

ソアは瞬きをした。そして目を開けると、リージョン、シルバー騎士団のメンバー全員、何百名もの男たち、少年たちが室内を埋め、彼のほうを向いていた。皆が一斉に膝まづき、顔を床に近づけんばかりにして彼に礼をした。

「我らが王」 一斉に声が上がった。

ソアは驚いて起き上がった。真っ直ぐに座り、息を荒くして周囲を見回した。暗く、湿った場所だった。壁に背中を付け、石の床に座っていることに気づいた。暗闇の中で目を細めると、遠くに鉄の柵と、その向こうには明滅するたいまつが見える。思い出した。牢獄だ。宴会の後、ここに連れてこられたのだった。

あの看守が彼の顔にパンチを食らわせたことを思い出し、気を失っていたに違いないと思った。どれくらいの間かはわからない。起き上がると、深く息をし、ソアは恐ろしい夢の記憶を払いのけようとした。あまりにも現実的だった。現実でないことを、王が亡くなってなどいないことを願った。死んだ王の姿が頭から離れなかった。ソアは何かを見たのだろうか?それともただの想像だろうか?

ソアは誰かが足の裏で自分を蹴っているのを感じ、見上げると目の前に立っている者がいた。

「そろそろ目を覚ましても良い頃かと思って。」声が聞こえた。「何時間も待っていたんだ。」

薄暗い光の中で、ソアは十代の少年の顔を見た。自分と同じぐらいの年頃だ。痩せて背が低く、頬はこけ、あばた顔だった。それでも緑色の目の奥には何かしら親切で知的なものが感じられる。

「僕はメレク。」彼は言った。「君の刑務所仲間だ。どうしてここに入れられたんだい?」

ソアは気持ちを引き締めようと、身を起こした。壁にもたれかかって髪を手ですきながら、思い出し、すべてを整理しようとした。

「みんな、君が王様を殺そうとしたって言ってるよ。」 メレクがしゃべり続けた。

「そいつは本当に王を殺そうとしたんだ。ここから出ようものなら八つ裂きにしてやる。」とげとげしい声がした。

ブリキのカップを金属の柵にぶつける、ガチャガチャという音が一斉に起こった。廊下に沿ってずっと監房があるのが見えた。ソアは、不気味な外見の囚人たちが柵から頭を突き出し、チラチラと明滅するたいまつの灯りの中で自分に向かってニヤニヤ笑っているのを見た。ほとんどの者がひげも剃っておらず、歯は欠けていた。中には、何年間もここに暮らしているように見える者もいた。恐ろしい光景だった。ソアは思わず目をそむけた。本当に自分はここに入れられたのか?この者たちと一緒にずっとここにいることになるのだろうか?

「あいつらのことは気にしなくて良いよ。」メレクが言った。「この監房には君と僕だけだからね。あいつらが入って来ることはできない。君が王に毒を盛ったのだとしても僕は気にしない。僕がそうしたいくらいだからね。」

「僕は王に毒を盛ったりなんかしていない。」ソアは憤然として言った。 「誰にも毒を盛ったりなんかしない。僕は王を救おうとしたんだ。ただ王の杯を払い落としただけなんだ。」

「どうして杯に毒が入っていたってわかったんだよ?」聞き耳を立てていた者が通路の向こうから叫んだ。 「魔法かい?」

皮肉っぽい笑い声が廊下のあちこちから一斉に響いてきた。

「霊能者だ!」誰かが嘲るように叫んだ。

他の者が笑った。

「いや、ただ運よく当たっただけだろうよ!」別の誰かが大声で言うと、皆は大喜びだった。

ソアはにらみつけた。こうした非難を嫌い、きちんと正したかった。だが時間の無駄だろうということもわかっていた。それに、この犯罪者たちを相手に自分を弁護する必要もなかった。

メレクはソアを観察し、他の者たちとは違って疑いの目では見なかった。じっくりと考えているように見えた。

「僕は信じるよ。」彼は静かに言った。

「本当に?」ソアが尋ねた。

メレクは肩をすくめた。

「王に毒を盛ろうというのに、わざわざ知らせるなんてばかなことをするかい?」

メレクは振り返って歩いて行った。監房の中の自分の側に向かって数歩行くと、ソアのほうを向いて壁にもたれかかって座った。

ソアは興味を持った。

「君こそどうして入れられたの?」ソアは聞いた。

「僕は泥棒さ」メレクは、どこか誇らしげに答えた。

ソアはぎょっとした。これまで泥棒に出会ったことなどなかった。本物の泥棒。物を盗むなんて考えたこともないため、そうする者がいるということにいつも驚いていた。 「どうしてそんなことをするの?」ソアが聞いた。

メレクは肩をすくめた。

「僕の家族には食べるものがないんだ。食べないとならないだろう。僕は学校にも行っていないし、何の取り得もない。僕が知っているのは盗むことだけだ。それ以外これと言って何もない。盗むのはほとんど食べ物だけだ。何とか家族が生きていけるだけのもの。何年も逃げ切って来たけれど、捕まった。捕まるのはこれで3回目だ。3回目っていうのは最悪だね。」

「どうして?」ソアが聞いた。

メレクは黙っていた。そしてゆっくりと首を振った。彼の目に涙がたまるのを見た。「国王の法律は厳しいんだ。例外はない。3回罪を犯したら、手を切り取るんだ。」

ソアは恐ろしくなった。そしてメレクの手を見た。まだそこにある。

「まだ僕のところへは来ていない。」メレクは言った。「でも そのうち来る。」

ソアはひどい気持ちになった。メレクは恥じているように目をそらした。ソアもそのことについて考えたくなかった。

ソアは気が変になりそうで、頭を抱えた。考えを整理しようとした。この数日間は本当に目まぐるしかった。短い間にたくさんのことが起きた。達成感があり、正当性を証明できたような気持ちがしていた。未来が見え、マッギルの服毒を予見して、王を救うことができた。運命は恐らく変えることができるのだろう。宿命は変えられるのかも知れない。ソアは王を救ったという誇らしさを感じた。

その一方で、自分は今こうして牢獄に入っている。自分の汚名をそそぐことができずにいる。希望や夢はすべて断たれた。リージョンにまた加わる可能性は消えた。ここで残りの人生を終えないで済むとしたら幸運と言えよう。まるで父親のように自分を迎え入れてくれ、自分にとって唯一の父であったマッギルが、彼を殺そうとしたのが自分だと思ったことに心が痛んだ。一番の親友リースが、自分が彼の父親を殺そうとしたと思うかも知れないのも辛かった。そして最悪なのがグウェンドリンのことだ。最後に会った時のことを思い起こした。自分が娼館に足繁く通っていたと彼女が信じるようになってしまったことを考え、自分の人生の良い部分が根こそぎ奪われたような気がした。なぜこんなことがすべて自分に起こるのだろうかと考えた。自分は良いことをしたかっただけなのに。

ソアには、自分がこれからどうなるのかわからなかった。気にもならなかった。ただ自分の汚名を返上したいだけだ。王を傷つけようとなどしていないこと、彼の持つ力で未来が本当に見えたのだということを皆にわかってもらいたかった。先のことはわからなかったが、ここをどうにかして出なければならないことだけははっきりしていた。

ソアがそんなことを考えているうちに、重いブーツで石の廊下をドシンドシンと歩く足音が聞こえた。鍵の音がし、その直後にがっしりした看守が現れた。ソアをここに連れてきて、顔にパンチを食らわせた男である。その顔を見るなりソアは初めて頬の痛みに気づき、嫌悪感を感じた。

「さて、王様を殺そうとした小僧がいなかったら」看守が錠に入れた鉄の鍵を回し、にらみながら言う。カチリという音が何度か響いた後、看守は手を伸ばして監房の扉を引いた。片手に枷を持ち、腰には小さな斧を下げている。

「お前にはお前の罰が下るさ。」彼はソアを鼻であしらい、メレクのほうを向いた。「今はお前の番だ。こそ泥め。3回目だな。」悪意に満ちた笑みを浮かべて、「 例外はない。」と言った。

メレクに飛びかかって彼を乱暴につかむと、片方の腕を背中のほうへ引っ張って手枷をはめ、反対側を壁のフックにはめた。メレクが叫び声を上げ、手枷をはずそうと強く引っ張ったが、無駄だった。看守はメレクの後ろに回ってつかみかかり、抱きかかえると、枷をはめていない側の腕を取って石の棚の上に置いた。

「盗みを働かないよう教えてやる。」看守が言った。

そしてベルトから斧を取り、口を大きく開け、醜い歯を見せながら、斧を頭上高く振り上げた。

「やめて!」メレクが叫んだ。

ソアはそこに座ったまま、看守がメレクの手首めがけて武器を振り下ろそうとする間、恐怖で釘付けになっていた。数秒後にはこのかわいそうな少年の手が永遠に切り取られることがわかっていた。家族に食べさせる物を手に入れようとして犯してしまった、ちょっとした盗みのために。理不尽だという思いがソアの心の中で燃え上がった。こんなことを許すわけにはいかないとわかっていた。あまりにも不当だ。

ソアは全身が熱くなるのを感じた。熱く燃える感覚が両足から上って来て手へと流れた。時間がゆっくりと流れるのが感じられ、男の斧が宙にあるうちに、一秒の中のすべての瞬間に、男よりも素早く動いていた。手の中に燃えさかるエネルギーの球を感じ、看守に向かってそれを投げつけた。

自分の手から黄色い球が宙を伝い、尾を引いて暗い監房を照らしながら、看守の顔にまっすぐ飛んで行くのを呆然と見つめた。球は頭に当たって斧が手から落ち、看守は飛ばされて監房を横切り、壁に当たって倒れた。斧の刃がメレクの手首に届くすんでのところで、ソアは彼を救ったのだった。

メレクは目を見開いて、ソアを見た。

看守は頭を振りながら、ソアを取り押さえるため起き上がろうとした。ソアは自分の中の力を感じ、看守が立ち上がってこちらを見た瞬間、走って空中を飛び、彼の胸を蹴った。自分でも気づかなかった力が体中をめぐり、大男を宙へ蹴り飛ばした時に割れるような音を聞いた。男は宙を飛んで壁にぶつかった後、床の上に塊となって落ちた。今度は気を失うまでに打ちのめされた。

メレクはショックを受けて立ち尽くしていた。ソアはどうしたらよいかわかっていた。斧を手に取ると、急いでメレクのところへ行き、石につながれた手枷を切った。鎖が切られる時、大きな火花が散った。メレクはひるみ、やがて顔を上げて鎖が足まで垂れているのを見て、自分が自由になったことに気づいた。

ソアを見つめ、開いた口が塞がらなかった。

「何てお礼を言ったらよいのか、わからない。」メレクが言った。「あれが何にせよ、どうしたらあんなことができるのか、そして君が誰なのか、あるいは何なのか、全く見当もつかないけれど、僕の命を救ってくれたのは確かだ。借りができた。これはとても重要なことだと思っている。」

「借りなんて何もないよ。」ソアは言った。

「そんなことはない。」メレクは手を伸ばして、ソアの腕を取りながら言った。「君はもう僕の兄弟だ。そして僕はどうにかして借りを返す。いつか絶対。」そう言うと、メレクは振り返って開けっ放しの扉から急いで出て行き、他の囚人たちが叫んでいる廊下へと走って行った。

ソアは気を失っている看守と、開け放たれた扉を見やり、自分も行動を起こすべきだと思った。囚人たちの叫びは一層大きくなった。

ソアは外に出て左右を見回し、メレクとは反対方向に行くことにした。二人を同時に捕まえることはできないだろう。

第三章

ソアは一晩中走り続けた。騒がしさに驚きながら、宮廷の混然とした通りを抜け手行った。街は混雑し、人々が動揺した様子で道を急いでいた。たいまつを手にしている者が多く、夜の街を照らし、顔にくっきりとした影を投げかけていた。城の鐘が絶え間なく鳴らされている。一分に一度、低い音で鳴る鐘だ。それが何を意味するかソアにはわかっていた。死だ。死の鐘。今夜、この鐘が鳴らされる者があるとすれば、王国ではたった一人しかいない。王だ。

ソアはそう考え、心臓が鳴った。夢の中の短剣が脳裏をよぎった。あれは本当だったのか?

確かめなければならなかった。通行人、反対方向に走って行く少年を捕まえた。

「どこへ行くんだ?」ソアは詰問した。「この騒ぎは一体何なんだ?」

「聞いてないのかい?」少年はひどく興奮して言い返した。「王様が今にも亡くなろうとしているんだ!刺されたんだよ!知らせを聞こうと、人が大勢宮廷の門に集まってる。もし本当なら、大変なことだ。王のいない国なんて考えられるかい?」

そう言うと、少年はソアの手を押しのけ、振り向くと夜の街へと走り去って行った。ソアは立ち尽くした。心臓が激しく鳴っている。周りで起きている現実を認めたくない気持ちだった。自分が見た夢、虫の知らせは幻想ではなかった。未来を見たのだ。二回も。そのことにソアは恐怖を感じた。自分が思っているよりも自分の力は深遠だ。そして日に日に強まっていく。これからどうなるのだろう?

ソアは立ったまま、次はどこへ行くべきか考えた。脱獄はしたものの、どこへ行くべきか全くわからない。 直に衛兵たちが、そして宮廷の誰もが自分を探すに違いない。逃亡の事実によって、自分は一層怪しく映るだろう。だが一方で、ソアが牢屋にいる間にマッギルが刺されたとなれば、それは彼にかかっている疑いを晴らしてくれるのではないか?あるいは陰謀に加担しているように見えるだろうか?

ソアは危ない賭けに出ることはできなかった。明らかに、今、合理的な考えに耳を傾ける気分になれる者など王国にはいない。周りの誰も彼もが殺意を抱いているように見えた。そして自分は恐らくいけにえの羊になるであろう。隠れ家を見つける必要があった。嵐を切り抜け、汚名をそそぐことのできる場所。安全な場所はここからは遠くなるだろう。逃げて、自分の村に避難したほうがよい。いや、それよりももっと遠く、行ける限り、一番遠くへ。

しかし、最も安全な方法をとろうとは思わなかった。ソアはそういう人間ではないのだ。ここに留まり、汚名をそそぎ、リージョンでの地位を保ちたかった。彼は臆病者ではなかった。そして逃げもしなかった。何よりも、亡くなる前にマッギルに会いたかった。まだ生きているとして。会う必要があった。暗殺を止められなかったことへの罪の意識にさいなまれていた。ソアに何も成すすべがないとすれば、なぜ王の死を目撃する運命にあったのか?そして、王が実際は刺されるというのに、なぜ毒を盛られるところを心に描いたのだろうか?

立ったまま考えを巡らすうち、ソアはリースに思いが至った。リースはソアが唯一信頼できる人物だ。自分のことを当局に引き渡したりなどしない。安全な居場所さえ用意してくれるかも知れない。リースなら自分のことを信じてくれるような気がした。ソアが王のことを純粋に慕っているのを、リースは知っている。ソアの名誉を挽回してくれる人がいるとしたら、それはリースだ。彼を見つけなくてはならない。

ソアは裏道を全力で走り出した。人の流れに逆らってあちこちを曲がり、宮廷の門とは反対方向に、城に向かって行った。リースの部屋が、市の外壁に近い建物の東翼にあるのは知っていた。リースがそこにいることだけを願った。もしいれば、気が付いてもらい、城に入る方法を見つけてくれるかも知れない。ソアは、外にいるのが長引けばすぐに見破られてしまうだろうと考え、気分が落ち込んだ。もし群衆が自分に気づけば、自分は八つ裂きにされてしまうだろう。

道から道へと進み、夏の夜のぬかるみに足を滑らせながら、やっと城の石造りの外壁までたどり着いた。数フィートごとに配置され、警戒する衛兵たちの視線のちょうど下を壁にぴったりと沿うように走った。

リースの部屋の窓に近づくと、下に手を伸ばして表面のなめらかな石を一つ拾った。幸運にも、取られずに済んだ唯一の武器が、使い慣れ、頼りにしてきた投石具だった。腰からそれを出し、石をはめて投げた。

ソアのねらいの確かさで、石は城壁を越え、リースの部屋の開け放たれた窓に向かって飛んだ。室内の壁に当たる音を聞いた後、その音にギクリとした衛兵に見つからないよう、壁に沿って低くかがみながら待った。

しばらくは何も起こらなかった。結局リースは部屋にはいなかったのだと思い、気が沈んだ。いないなら、ソアはこの場所から逃げなくてはならない。安全な逃げ場を得る方法は他にはないのだから。リースの部屋の開いた窓の部分を見つめ、息をこらして待つ間、心臓がどきどきした。

かなり長いこと待った気がした。顔をそむけようとしたちょうどその時、窓から顔を出して両手を窓枠のところに置き、不思議そうな面持ちで外を見回す姿が見えた。ソアは立ち上がり、壁から数歩素早く離れ、片腕を高く上げて振った。リースが下を向き、ソアに気づいた。ソアの姿を認めて表情が明るくなった。たいまつの灯りで、ソアの場所からもはっきりと見えた。嬉しそうな顔を見て、ソアは安心した。それで知りたかったことのすべてがわかった。リースは自分を売ったりしない。

リースが待つように合図したので、ソアは壁に急いで戻り、ちょうど衛兵が向きを変えたとき低くしゃがんだ。

いつでも衛兵から逃げられるよう態勢を整えながら、どれくらい待っただろう。外壁のドアから飛び出るように、やっとリースが現れた。息を切らして左右を見回し、ソアを見つけた。

リースは急いでやって来て、ソアを抱きしめた。ソアは嬉しかった。キーキーという声が聞こえ、見下ろすとリースのシャツにくるまれたクローンがいた。リースがソアに渡す時には、クローンはシャツから飛び出さんばかりだった。

成長し続ける白ヒョウの子ども、クローンは、ソアがかつて助けたあげたのだった。ソアの腕に飛び込み、抱きしめてやると、泣きながらソアの顔をなめた。

リースは微笑んだ。

「あいつらが君を連れていった時、クローンはついていこうとしたんだ。だから僕が捕まえておいた。危ない目にあわないように、と思って。」

ソアはリースの腕をつかんで、感謝の気持ちを表わした。そしてクローンがあまりにも自分のことをなめ続けるので、笑った。

「僕も寂しかったよ。」そう言って、ソアもクローンにキスして笑った。「静かに。衛兵に聞こえるかも。」

クローンも理解したかのように黙った。

「どうやって逃げたの?」リースが驚いて尋ねた。

ソアは肩をすくめた。何と言ったら良いかわからなかった。自分の力について話すのは今でもあまり居心地が良くなかった。自分でもよくわかっていないのだ。奇人のように他人から思われたくなかった。

「きっとついていたんだよ。」そう答えた。「チャンスがあって、その時に。」 「みんなが君をつるし上げなかったのが驚きだ。」リースが言った。

「暗かったからね。」ソアが言った。「誰にも僕だとわからなかったと思う。今のところはね。」

「王国の兵士が全員君のことを探しているのは知ってる?父が刺されたのは知っているかい?」

ソアは真剣な顔で頷いた。「大丈夫なのか?」

リースの表情が沈んだ。

「いや。」険しい顔付きで答えた。「危険な状態だ。」

ソアは、まるで自分の父親であるかのように打ちのめされた気がした。

「僕が関わっていないのはわかってくれるよね?」ソアはそう願いながら聞いた。他の者がどう思おうと気にならなかったが、マッギルの末息子である自分の一番の友には、自分が無実であることをわかって欲しかった。

「もちろんだよ。」リースが言った。「でなければ、今ここにいないよ。」

ソアはほっとした。感謝してリースの肩を抱いた。

「でも、王国全体は僕ほど信用していない。」リースが付け加えた。「君が安全なのはここから遠い場所だ。僕の一番速い馬と、必要な物を用意して、遠くへ行けるようにする。すべてが治まるまで隠れていなければならない。真犯人を見つけるまで。今は誰も落ち着いて考えられないから。」

ソアは首を振った。

「僕は行けない。」ソアが言った。「そうすれば怪しく見える。僕がやっていないということを知ってもらう必要がある。問題からは逃げられない。汚名をそそがなければ。」

リースは首を振った。

「ここにいれば、君は見つかる。また牢屋へ逆戻りだ。そして処刑される。それまでに群衆に殺されなければね。」

「そういうことも受けて立たないと。」ソアが言った。

リースは長いことじっとソアを見つめた後、懸念から賞賛の面持ちに変わった。最後に、ゆっくりと頷いた。

「君は誇り高い。そしてばかだ。ものすごくばかだ。だから好きなんだ。」

リースが微笑んだ。ソアも微笑み返した。

「お父上に会う必要がある。」ソアが言った。「僕ではないと、何にも関係していないと、直にご説明する機会が必要なんだ。もしお父上が僕に判決を下すなら、そうなったって良いさ。でも、チャンスが欲しい。わかっていただきたいんだ。お願いしたいのはそれだけだ。」

リースは友の言うことを整理しながら、真剣に見つめ返した。長いこと経ってからやっと頷いた。

「父のところに案内はできる。裏の通路を知っているから。父の部屋につながっているんだ。でも危険が伴う。一度部屋に入ったら、自分でなんとかしなければならない。出口はないからね。その時点で僕ができることは何もない。君は死ぬことになるかも知れない。本当にそんなことに賭けたいのか?」

ソアは本気で頷き返した。

「良いだろう。」リースが言った。そして突然手を伸ばし、ソアにマントを投げた。

ソアはそれを取り、びっくりした見た。リースがずっと計画していたのではないかと気づいたのだ。

ソアが見上げると、リースが微笑んだ。

「ここに留まる、ってばかなことを言うのはわかってたよ。自分の親友が言うのはそれ以外考えられないからね。」

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